山形を出発して10日目。今日はいよいよ東京に入る。朝6時に春日部市のスパランドを出発し、約50分で旧国道4号に出た。この道を南下すれば越谷、草加を抜けて上野駅前に出るはずだ。
有名な「草加せんべい」は江戸時代から日光街道の名物だった。市内では昔ながらの手焼き姿をみることができる。その1つ「藤田せんべい店」で手際よく焼き上げる旦那さんの作業姿をしばらく見学させてもらった。香ばしさに誘われ、どうしても食べたくなった。10枚買って、すぐ口にした。「おいしい」。聞けば息子さんが米沢に赴任したことがあるそうで、山形を話題にけっこう話をしてくれた。
草加せんべいをほおばりながら歩き、30分もすると東京都足立区の標識があった。街の中でそれほど大きな標識でもなかった。伊勢までの行程を考えれば通過点の1つにしかすぎない。しかし「ここから東京」「とうとう東京まで来た」と思うと、やはり胸にくるものがある。時計を見ると11時30分。カメラを取り出して、標識を写真に撮った。
都内に入ってから街道沿いにあった公園でシルバー世代の人たちが野球の練習をしていた。休憩を兼ねてしばらく見物することにした。選手の動きや技術は我々と同じように見え、山形で練習に励むチームメイトを思い出させるひと時でもあった。
昔、仙台藩主の参勤交代は10日前後で往き来していたと-聞いたことがある。1日平均が約40㌔。かなりハードなペースだ。できれば「これと同じペースで」というのが1つの目安だった。途中で足を痛めたものの、一応このペースはクリアできた。後の行程につながる自信を持つこともできた。
(続く)